俺の家にが居候していることは、早くもクラス中に広まったことは言うまでもない。俺にとっての地獄はその一瞬だったが、にとっての地獄はそれからだった。に事情を聞くべく集まった興味津津なクラスメートの中には当然男子生徒もおり、の顔はみるみる真っ青になった。かと思えば、そのまま気を失ってしまったのだ。

「ここまで酷いとは聞いてないのだよ…」
「ご、ごめんなさい…っ!」

 意識のない内には俺が保健室へと運んだ。起きて俺の顔を見るなり跳ね起きて後ろに落ちそうになったため、慌てて腕を引き寄せるも、はまた固まってしまう。先が思いやられるどころの話ではない。普通の学校生活などこれでは送れないのではないか。大体、家も父が今は出張中で留守にしているが、その内帰って来る。そうすればにとって苦手なものが二倍になる訳だ。

「もう一度言うが、秀徳は共学だ」
「はい…」
「それでも白羽女子には戻らないんだな」
「戻りません…!!」

 初めてと目が合った。涙目ではあるが、こちらを見て揺らがない。…にはなりの考えがあるのだろう。もしかすると、共学に転向すると言う荒療治も自ら言い出したのかも知れない。案外、頑固な性格なのだろうか。運び込んだ荷物整理の手伝いを頑なに断ったことも、男嫌いというだけではないのかも知れない。それならまあ、あまり悪い奴ではないのかも知れないのかも知れない。

「では、ある程度は自力で頑張るんだな。俺がフォローできる事も限られているのだよ」
「が、がんばります!」

 意気込んで見せる。しかし、いつまでも敬語というのはどこかの誰かを思い出して仕方がない。流石にそこまでは接点などないだろうが。
 その時、休憩時間のチャイムが鳴り、すぐに高尾が顔を覗かせた。

「真ちゃーん、ちゃん目ぇ覚めた?」
「うひゃっ、むぐっ」
「保健室では静かにするのだよ…!」
「真ちゃん、その子また失神するよー…」

 はっとしてを見ると、失神こそしていないが目を回している彼女がいた。







  

(2013/03/13)