月曜日、が担任に連れられてホームルームに現れた時、今日のラッキーアイテムである青い花の描かれた花瓶を床に落としそうになった。

です…!」
は女子高出身で慣れない所も多い。特に女子、を助けてやれよ」

 担任も男、クラスの半数も男というこのクラス。は頭の中で何を葛藤しているのか、赤くなったり青くなったりしている。自分の名前すら噛んだは、ロボットかとでも言いたくなるような動きで指定された席まで歩いて来る。即ち、俺の後ろの席だ。ちなみにの左側は窓、右には高尾がいる。
 ホームルームが終わると何事もなかったかのように教室を出て行く担任。話しかける機会を窺っているのだろう、をちらちらとクラスメートが見ている。しかしそれらを振り切って俺はを振り返った。

「そうではないのだよ!」
「ひィ!」
「なになに、転校生に向かっていきなりヒステリック?」

 そう叫ぶと、ガタタっと大きな音をさせては立ち上がり後ずさった。…いや、怖がらせるつもりはなかったのだが(本当に)。

「同じクラスだなんて聞いていないのだよ…!」
「わ、私もさっき職員室で聞いただけで…!」
「おーい俺無視ー?」
「大体、俺と高尾に囲まれていては友人が作りにくいだろう!」
「ご、ごめんなさい…!」
「いやいや真ちゃん、それはさんのせいじゃないっしょ」
「高尾は黙っているのだよ!」
「酷くね!?」

 じわじわと机ごと下がって俺と高尾から距離をとる。それに気付いた俺がじっと見つめると、気まずそうに身を小さくして若干机を元に戻した。どうせそんなことをしても、その内定位置に戻ると言うのに。
 しかし先が思いやられる。俺と高尾の会話を聞いているだけでこんなにも萎縮しておいて、なぜ共学を選んだのだ。

「えー、さんってば真ちゃんと知り合い?てかどういう関係?」
「えっと、」
「言う必要はない」
「あの、でも…!」
が俺の家に住んでるなんて高尾が聞いたら大笑いするに決まっているのだよ!」
「…………」
「…………」

 も、高尾も、そして俺も固まる。いや、さっきのは間違いだ、なかったことにしてくれ、悪い冗談だ。…などと様々な言い訳をしてもそれらは全て頭の中で展開されている訳で。

「ぎゃははは!なにそれ真ちゃん女の子と一つ屋根の下!?」
「誤解を招く言い方はやめるのだよ!!」







  

(2013/02/16)