「……二週…間…」
「そ、そうよ、二週間」
「スメラギさんは、ああああたしが、あたしが二週間…」
「落ち着け
「これが落ち着いていられますかロックオン…あたしが、二週間、アーデなしで、どう、生きろと…」











もっと冷たく囁いて!


〜ドMは影響力大〜











 その知らせを受けたのは、ティエリアが発つ日だった。


「聞いてない!あたし聞いてないよアーデ!」
「言ったらまた無茶を言ってついて来る気だろう!」
「当たり前だよ!」
「当然のように言うな馬鹿か貴様は!」


 以前、ティエリアの地上での任務数日前に、そのことをに伝えると相当な駄々をこね、ミッションプランを変更してまでは地上ミッションに加わることになった。それを予め防ぐために、今回はトレミークルーは全員がに黙っていたのだ。そして結局に知らされたのは、正に出発一時間前。は動揺するどころか青ざめ、ふらふらとしている。貧血を起こしそうな青白さに、すぐ近くにいたアレルヤがの体を支えた。


「大体たかだか二週間、これまでだってあっただろう」
「以前の二週間と今の二週間じゃ大きな差だよう…それはもう五十年に匹敵する二週間なんだよう…」
、気持ちは分かるけど任務なんだし仕方ないよ」


 アレルヤは慰めのつもりで言ったのだろうが、今のは放心状態も良い所で、何を言われても理解できない。いや、受け入れられないと言った方が正しい。どこからかショパンの葬送行進曲でも聴こえて来そうな黒いオーラを纏っている。呪文のようにぶつぶつと独り言を呟くさまはいっそ恐ろしくもあるが、の性格を把握しているティエリアは溜め息しか出て来ない。荒療治でも駄目となると次回からどうしろというのだ、と、まだミッション開始前にも関わらず、次のミッションの心配をしなければならない始末。


「ほら、刹那も僕もいるし」
「でも二人は罵ってくれない…」
「そ、それは、…うん、ごめん」
「アレルヤ・ハプティズム、君が謝る必要は皆無だ」


 何か苛立ち、半ば八つ当たり気味にアレルヤへそう言った。すると萎縮した彼は「う、うん、分かったよティエリア…」と返す。

 がぐずったり少々我儘を言うのはいつものことだ。以前であればティエリアが地上に降りるとなれば、あれが欲しいこれが欲しいと、任務だと言うのにいろいろとせがんで来ていたのが、形が変わったのだと思えばいい。物から自分に移ったのだと納得できる。けれど問題は自分が降りている間、このトレミーには他の男(特に刹那)がいるということだ。こんなにもふらふらしているを置いて、どうやって安心して地上へ向かえようか。自分がいない間に弱っている所へ付け込まれたりでもしたらどうなる。

 涙ぐんだを慰めるためとはいえ、今まさにアレルヤが彼女の髪を撫でたり、もアレルヤにしがみ付いたりしている。


(イライラする)


 ティエリアはぐずぐず言っているをアレルヤから剥ぎ取り、腕を力いっぱい引くと、周りの目を気にせずにの唇に思いっきり自分の唇を押し付けた。何秒か、或いは何分だったかも知れない。とりあえず気の済むまでそうしてようやく離れると、今度は林檎かというほど真っ赤になったがいた。何を言いたいのか、口をぱくぱく動かしているが声になっていない。もう一度、今度はそっと引き寄せると、ティエリアは耳元でにしか聞こえないように言ってやった。


、他の男に気を許したら今度こそ大気圏へ突き落す」


 それで満足したティエリアは、また押し返して離れ、格納庫へ向かった。後ろで何か叫び声が聞こえるが、聞こえないふりをした。

 とりあえず、あの様子では二週間自分の心配するようなことは起きないだろう。のあれは寂しさだとかから来ているのだろうが、自分ばかりがイライラしていてはフェアじゃない。ならその要因を一つでも潰すことが先決。はきっとティエリアの苛立ちの理由なんて知るはずもないだろうから、帰って来たらまずそこから叩き込むべきだと決めた。
















(2010/3/14)

(すめらぎさんあたしあーでにふぬけにされそう…っ)
(あらー、でもティエリアを骨抜きにしてるのはでしょう?)