叫んだ。 「貴様ァァァァァァ!!!!」 緊急地震速報です。トレミーにて震度3ほどの地震。震源地はティエリア・アーデの部屋の模様。
もっと冷たく囁いて! 不機嫌極まりない、そしてげっそりしているティエリアの隣には、左頬を腫らしながらも幸せそうな笑みを浮かべている。朝からこの二人に遭遇すると厄介だ。その厄介な二人の目の前で朝食を共にしているのは、毎度仲介に入っているロックオンだった。 「で、一応聞くが今日は何があったんだ?」 「いやあ、実は」 「言うな!」 これで付き合っているというのだから信じがたい。世の中の恋人の定義から大きく、それも180度ほどかけ離れたような二人だ。この二人を一般人の枠に当てはめていいのか、という根本的な問題でもあるのだが、それを差し引いても疑問に思わざるを得ない。この二人、ちゃんとやって行っているのたろうか、と。誰がどう見てもデートDVにすら値しそうなティエリアのへの態度も、クリスティナを通して聞いた話では合意の上らしく、二人はトレミークルーの理解をはみ出た所にいる。 そして今朝だ。ティエリアの叫び声で部屋の近いクルーは目が覚めたわけだが、あの叫び声、後のこのの頬。一体今度は何をやらかしたのだか。また寝起きドッキリと称して盗撮に忍び込んだか、それともまさか夜這いをかけに行ったか。 「いやあ、アーデにはちょっと刺激が強かったみたいで…」 「貴様その口開かないように固めてやろうか」 「やーん!アーデと喋れなくなるよ!」 「五月蝿いのが減って嬉しい限りだな。セクハラ発言をクルーが聞く心配もなくなる」 「愛情表現でしょ?」 「今すぐ辞書で愛情の意味を調べて来い」 朝食の味がしねぇ。 本来なら仲の良すぎるほど良いカップルを見て「お腹いっぱいだ」などと言うのだが、この二人といると違う意味でお腹がいっぱいになる。いや、食欲が失せるという表現の方が正しい。 刹那やアレルヤはもう少ししてから朝食にすると言っていたが、その選択が賢明だったようだ。ティエリアはいつも朝は早いし、ならそれについて来ることは分かりきったことだったのに。そしてその行動パターンは自分なら読めたはずだったのに、完全に失敗してしまった。刹那とアレルヤのことだ、その辺りも計算済みだったのだろう。深く考えずに行動してしまったのが悪かった。自分は不幸体質なのだろうか。 「あー、もういいもういい。には後できつく言っておくから」 「ロックオン・ストラトス、その必要はない。この女は俺が直々に躾直します」 「え…っ」 「顔を赤らめるな!ティエリアには生活指導は任せられねーぞ!」 「…なぜです」 少しむっとしてこちらを見てくるティエリア。当のは他人事のようにきょとんとしてティエリアとロックオンを交互に見た。 (何だ、やはり一人前に妬いている、) 「この女にやられっぱなしでは気が済まない」 (訳がなかった…) どこが合意の上なんだか。の作り話をクリスが鵜呑みにしただけではないのか? そんな疑問がロックオンの頭を占める。どこからどう見ても付き合っているようには見えないのだ。 (ああ、でも) 以前であればこうして二人が並んで朝食を摂るなんてこともなかった。だとしたら、人の前ではこんな風にしていても実は仲良くやっているのだろうか。前に「アーデが優しすぎて怖い!」というようなことも(少し違うが)言っていたくらいなのだから、さすがのもこんな扱いばかりされている訳ではないはずだ。 ティエリアがに優しくしている所なんて想像できないが。 「とにかく早く朝食を済ませるんだ。・、今日は俺が貴様のシミュレーションを見てやろう。ロックオンでは甘過ぎる」 「いや俺は普通だ」 「あ、あの、もしあたしのシミュレーション成績が悪かったら…」 「何を期待しているが分からないが最低二週間部屋に入れない」 「ジーザス!!」 「あと十分で用意して来るように。それでは先に失礼する」 ティエリアはを置いて先に出て行ってしまった。そこでロックオンはに今朝の真相を迫ってみた。ティエリアがあそこまで話すことを拒否した、トレミーが揺れたかと思うほどの叫び声と、赤く腫れている頬についてだ。 「で、は今朝何をしたんだ?」 「夜這い?」 「ただの夜這いならティエリアもあんな叫ばないだろ…」 「えぇー…?」 それなら精々いつものように威嚇射撃(撃ちはしないが)程度で済むはずなのだから。はきっと何かしたのだろう。そう、例えば、 「ノーブラでしがみついてたからですかね?」 まあ裸じゃなかっただけましだと思おう。 しかしそんな姿で潜り込むなど、襲ってくれと言っているようなものではないか。いや、だがは夜中潜入したにも関わらずティエリアが気付いたのは今朝だ。が余程上手く気配を消したのか、ティエリアがに気を許しているから気付かなかったのか。あのティエリアが他者に部屋に踏み込まれて気付かないはずがない。対策にとセキュリティも他のクルーよりも厳重にしているのだから。 「何とか手を出してもらえないか努力してんですけどねぇ…」 「…お前さん、まさか襲われたくてわざわざ…」 「当たり前じゃないですか!」 やっぱりの思考回路は理解しがたい。いや、理解しようとする方が難しいのかも知れないと思ったのだった。 (2009/12/24 しかしドMの本領発揮はこれからでした) (だって寝る時にまでつけてたら内臓圧迫ですよ?) (いや、だからってなあ…) ← |