「これは?」
「好きです」
「これは?」
「大好きです」
「じゃあこれ」
「あんまり…」
ってさあ…」














 リジェネと二人で外食に来ました。昼間は外に出たがらないのに、不思議に思いながらついて行くと、ファミレスでした。少し前まで猫だったわたしは、もちろんこんな所に来たことがありません。メニューを見て目移りするわたしを面白そうに笑いながら眺めるリジェネ。なんだか急かされてるようでよけいに焦って、メニューを立てて顔を隠すと、リジェネは人差し指を引っ掛けてメニューを倒して来ました。思わずリジェネを上目に睨めば、くすくすと笑われます。アーデさんが学校に行ってる間もずっとこんな調子です。いつもわたしをからかって遊んで来るのです。


「自分の好きなものを挙げてみればいいよ」
「好きなもの…」


 そう言うと、また人差し指でメニューをトントンと叩きました。長い指がすすす、と紙面を移動していきます。順に指して行くそれはわたしの好きなものばかりで、よく覚えているものだと驚きました。けれど、指の止まったある一品を見てぎくりとします。明らかにわたしが固まったのを見て、リジェネはまたくすくすとおかしそうに笑いました。


ってさあ、味覚がどんどんティエリアに似て行ってるよね」
「そ…っそんなことないっ!」
「あるある」


 だってこれ、ティエリアも嫌いなものだよ。
 そう言って一層目を細めました。最近のリジェネはいつもこうです。何かとアーデさんを引き合いに出したり話題にしたりして来ます。自分は楽しいかもしれないけれど、こっちはたまったものじゃありません。ただでさえアーデさんといると心臓が苦しくなるのに、わざわざ思い出して苦しくさせないで欲しいです。このまま息ができなくなって死んじゃったらどうしよう、そんなことまで考えてるんです。面倒を見てもらってる手前、そこまで反抗的なことは言えませんが、人で遊ぶのも大概にして欲しいというものです。


ってばほんと可愛いなあ」
「…うれしくない」
「ああそっか、ティエリアに言って欲しいんだ」
「リジェネ!怒るよ!」


 最近、アーデさんがリジェネを鬱陶しがる理由が分かって来た気がします。






二人でごはん。


(2009/6/12)


(自覚させるのって本当難しいなあ…)
(何を?)
(二人は似た者同士だってこと)
(…………)