ヒーターの前で丸まっている子猫の背中を見つめながら、次にどうするべきかを延々悩んでいた。


(――どうすればいい)


 拾って来たはいいものの、動物を飼ったことがないためまずどうするべきか分からない。とりあえず体を拭いてあげてが、お腹だって空いてるだろう。何を食べさせたらいいのだろうか。それとも水分補給が先なのか。
 分からないなら聞くに限る。知り合いの顔を思い浮かべた。動物に詳しそうな人物といえば。














「驚いたよ」


 結果、呼んだのはアレルヤ。ロックオンでもよかったのだが、どうやら仕事中らしく電話に出なかった。刹那はあれだ、あまりそういうことに詳しくなさそうだ。そういう訳で大雨の中アレルヤが駆り出されたのだが、部屋に入るなり驚いた顔をした。


「理由も言わずにいきなり来いって、何かと思えば…」
「文句があるのか」
「違う違う!」


 睨むと慌てて訂正する。いいから早くどうすればいいか教えろ、と催促すれば、はいはいとおかしそうに笑う。本当に失礼なやつ…ではあるが、やはり彼を呼んで正解だったらしい。その後てきぱきと子猫の世話をしてくれ、今後どうすればいいかまでちゃんと教えてくれた。お礼にお茶くらいは出した方がいいだろう。
 子猫はと言うと、よほどヒーターが気に入ったらしく、その前から動かない。夕飯の準備をし始めても、シャワーを浴びた後も、飽きというものを知らないかのようにそこから動かなかった。何かあっただろうかと心配になるが、ちゃんと眼は開いて息もしている。それでも自分が起きている間はいいのだが、就寝時にまでヒーターをつけている訳にはいかない。


「消すぞ」


 スイッチを切ると、名残惜しそうに「みゃー」とまた鳴く。


「鳴けるんじゃないか」


 アレルヤが来てからも全く泣かなかったのが、ようやく鳴いた。ただ疲れているだけなのかも知れない。それはそうだ、あんな寒い冬の雨の中に放置されていたのだから。
 それはともかくとして、本当にどこで寝かせようか。細い体を抱き上げると、くすぐったそうに眼を細める。そして頭を首元に擦りつけて来た。今度はこちらがくすぐったい。
 悩んでいても仕方がない。下敷きにしてしまうことはないだろう。


「一緒に寝るか」


 今度は返事の鳴き声がない。きっと今までも気まぐれで鳴いていたのだろう。そう自己完結し、ベッドに潜る。けれどやっぱり寝ている間に潰してしまう危険が無きにしも非ずだったので、床にタオルを何枚か敷いて寝かせることにした。すると猫はすぐに眠気が襲って来たらしく、もう眼を閉じてしまっている。
 そしてようやく眠りについたのだが、事件は翌朝起こった。






レイニーデイ


(2009/1/25)


(かみさまかみさま、どうかかみさま)