覚めない夢がしい

 ねぇ、夢の話なんだけど、え?夢の話は嫌い?まあまあ、そう言わずに聞いてよ。ちょっとだけだから。…ふふ、ありがとう。あのね、夢を見たんだよ。何年後かなあ…ティエリアも私も今よりもう少し大人になってて、地上の都会からずぅっと離れた静かな田舎に小さな家を建ててね、そこに私たちは住んでるの。でもそこには私たち二人だけじゃなくて、もう三人いてね。二人は男の子ので一人は女の子なの。あっ、そのお兄ちゃん二人が私似で、末っ子妹がティエリア似ね。そりゃあもうすっごく可愛いんだから。お兄ちゃん二人も溺愛。ティエリアと取り合いするくらい可愛いの。ティエリア似だから当たり前だよね。ふふっ。…そんな親子の闘いを見ながら、私は朝ご飯とお弁当を作るの。お弁当はティエリアとお兄ちゃんの三人分。ティエリアは仕事、お兄ちゃん二人は小学校と保育園で、育児休暇中の私は末っ子妹とお留守番なの。お弁当を摘まみ食いしようとするお兄ちゃんたちを叱っていると、ティエリアは私を宥めて頬にキスをするの。私もお返しにキスを返すと、子どもたちがからかって……それからそう、タイミングよく保育園のバスがお兄ちゃんを迎えに来たんだよ。すぐ後に上のお兄ちゃんも出て行って?最後にティエリアが出勤。「行って来る」って小さく笑って、末っ子妹に手を振ってから、今度は唇にキス。家の門を出るまで見送って、家の鍵を閉めて、私は末っ子妹に「今日も二人でお留守番していようね」って言って、そこで夢は終わり。素敵じゃない?愛する旦那さんと、可愛い子どもと、素敵なお家。何も特別なことなんかじゃない。地上じゃどこにでもあるような家庭を、私たちが築いているの。喧嘩したり、笑ったり、キスしたり、抱き合ったり、ものすごく平凡なの。それがね、夢の中ですっごくすっごくすーっごく幸せだったの。ねぇ、ティエリアはどう思う?幸せだと思わない?え?私がいるだけでいい?も、もう!そんなこと言っても何も出ないんだからね!…ねぇティエリア、キスしよっか。


(2009/12/20)