で眠る夜のこと

 怖い夢を見て夜中に目が覚めると、その夜はそれ以降一人で部屋で寝ることができなくなってしまう。だから深夜でもティエリアを訪ねて部屋に入れてもらっている。どこまで甘えてしまって、どこまで依存してんだ、て、そんなの私が一番よく分かってる。

「また夢を見たのか」
「ごめ、なさ…っ」
「いや、いい。最近ゆっくり話もしてなかったしな。君が落ち着くまで僕も起きている」

 甘えたい私と、甘やかすあなた。体温が伝わるほどくっついて私たちは眠る。頭のすぐ上からする凪いだ水面のような声は心地よく、私をすぐに安心させる。何でもない今日の出来事を話すほんの少しの時間だけで、私の底にある恐怖を簡単に融かしてしまう。そうしてまた今日も、ティエリアの心音に凭れて目を閉じる。眠りにつく寸前、私の髪をひと撫でしてくれるのもいつものことだ。まるで魔法。ティエリアの傍にいるだけで、こんなにも穏やかな気持ちになれるなんて。

 だからお願い。私の目が覚めたらいつものように微笑んで、「おはよう」って言ったすぐ後には、そっと額にキスしてね。


(2009/10/5)