まるでドラチック

 私の輪郭をなぞるティエリアの白く長い指が好き。指先は冷たいけれど、頬を包む掌の温かさが好き。耳元で囁く時の静かな声が好き。真っ直ぐに私を映す紅い目が好き。普段はあまり感情表出しないけれど、二人になるといろんな表情を見せてくれる所が好き。私がねだると何度でも好きだって言ってくれる所が好き。
 具体的にどこが好きかなんて言い出したらきりがないのに、その全部を伝えたくて、どうすれば上手に伝えられるのか分からなくて、その悔しさに私は爪を噛む。すると私の手首を掴んで指先を舐めるティエリア。ざらついた舌の感触にぞくりとしながら、指をくわえたまま私を見るティエリアに胸が一層大きく跳ねる。手を引っ込めようとしたら抱き寄せられ、次は直に唇を塞がれた。

「綺麗な爪が勿体ない」
「ティエリアほどじゃないもの」
「何を馬鹿なことを」
「私、ティエリア以上に綺麗な人なんて見たことないし…」

 不貞腐れると、おかしそうに喉を鳴らして笑うティエリア。仮にも恋人が真剣に悩んでいるというのに、笑うことはないだろう。笑いを堪えようともせず、私の頭の上でひたすら笑い続けるので、胸を押し返して離れた。頬を膨らませてそっぽ向く私の、なんてガキっぽいこと。
 けれどそんな私を再度抱きしめ、髪を掬い上げてキスをすると、

「僕は君以上に可愛い人を見たことがないが?」

 そう、あやしく笑う。
 逃げようとしてももう遅い。私の視界が反転するまでのカウントダウンが、頭の片隅で静かに回り始めた。


(2009/6/7)