目を覚ましたがへらりと笑った。眠そうでとろんとした表情は呆れるくらい幸せそうだ。大方良い夢でも見たのだろう。すると聞いてもいないのに「リーマスの夢を見たの」と言った。 「どんな夢だったか聞きたい?」 「うん」 擦り寄って来るをそっと抱きしめる。指の隙間からすり抜けて行く髪を何度も梳くと、擽ったそうに「ふふ」と小さく笑う。 こんな風に笑うが好きだ。まるで汚れを知らない真っ白な彼女は自分には余りにも眩しく、触れるだけで壊してしまいそうだった。実際はそのようなことは勿論なくて、清いのと強かなのは別だということは分かっている。彼女はこう見えて芯の強い人間だ。 無言になった腕の中のに問い掛ける。「どうしたんだい?」「夢を見たの」「うん」「リーマスが出て来たのよ」「僕が死ぬ夢?」違う、と弱々しく首を振る。 「私がリーマスの首を絞めてた」 「……」 「笑ってたの、私。それなのに笑ってたのよ」 の暗い闇を垣間見る。かたかたと震えるは顔を上げようとはしない。腕の中で罪悪に苛まれているであろうことは容易に想像できた。けれど思いの外ショックを受けない自分にこそ驚く。 失う恐怖の淵にまたもいるのだという、狂気に塗れた安堵がじわりじわりと侵食する。引き返せない泥沼に居るのは、けれど自分だけでいいと思う。彼女はまだ、眩しいままでいて欲しい。 「になら絞められてもいいかな」 「じょ…冗談じゃないわ!」 「冗談だよ、はそんなことができる子じゃない」 だから、嬉しかったとか、いっそ殺してくれていいとか、言えない僕を許して。 (2011/10/30) |