冬休みも近付き、少しずつ荷造りをする私の部屋に、真希ちゃんは来ていた。特に何をするでもなく、私を見て、スマホを見て、を繰り返している。

「真希ちゃんは帰省しなくていいの?」
「強制じゃねえし行かない」
「そっか」

 そうだろうとは思ったけれど、そんな真希ちゃんの前で帰省の準備をするのは気まずい。それに文句を言うことも真希ちゃんは当然しないけれど、何か言いたげにこちらを見て来るので、どうしたの、と聞く。けれど、「なんでもねえよ」とぶっきらぼうな返事が飛んで来てしまった。
 冬休みは、夏休みに比べればずっと短い。けれど、全寮制で毎日顔を合わせる真希ちゃんと、二週間程度とはいえ会えないのは、なんだか不思議な感じがするし寂しくもある。高専に入る前は当然、年に一、二回くらいしか会わなかったと言うのに。

「ねえ真希ちゃん」
「今度はなんだよ」
「良かったら、冬休みうち来ない?」
「……は?」

 遠縁の親戚だし、高専側に所在を届けておけば許可は出ないことはないだろう。たった二週間ぽっちとはいえ、先輩たちもほとんど帰省するだろうし、そんなガラガラの寮に真希ちゃんを一人にするのは、なんというか、心配というか。高専のセキュリティを疑うわけではないのだけれど。
 だが、私の突然の発案に真希ちゃんも目を丸くする。両親も真希ちゃんとは顔見知りではあるけれど、さすがに二週間うちに滞在すると言うのは思いつかなかったらしい。そもそも、冬休みの間泊めてくれなんて言うほど、真希ちゃんは図々しい人ではない。

「ね、それがいいよ。クリスマスはケーキ食べるでしょ、大晦日もうちで過ごして、初詣も二人で行こうよ!あっおみくじ引きたい」
「いや、何勝手に…」
「もう来年の話をしても鬼は笑わないでしょ?」
「そりゃ笑わねえだろうけど」

 とは言いつつ、真希ちゃんもちょっとその気があるのかそわそわしている。私と話していて少しだけ目が泳ぐのは、大抵ちょっと浮かれている時なのだ。

の実家には言ったのかよ」
「これから言うよ。きっと大丈夫、うちの親も真希ちゃんに会いたがってるから」
「はー……」

 頭を抱えて大きなため息をつく真希ちゃん。ここまで来ればもうあと一押しだ。

「ね、真希ちゃん、私の家に行こうよ」
「…仕方ねえな」
「やった!嬉しい!」

 帰省の荷造り手伝えよ、と私の頭を小突く。その声はいつもより少しだけトーンが明るい。
 夏休みにも何日か遊びには来たけれど、今回は冬休みの間ずっと真希ちゃんと一緒だ。きっと真希ちゃんがいるなら冬休みの課題も捗るに違いない。
 へへへ、と笑うと、いつもだったら「気持ち悪い」と一括して来る真希ちゃんが、私に釣られて少し笑った。冬休みは、もうすぐそこだ。